らくだ

死体は踊るよ、かんかんのう。

【あらすじ】
長屋の嫌われ者、らくだがフグにあたって死んでしまいました。らくだの兄貴分はたまたま通りかかったくず屋をつかまえて、大家に通夜の酒とつまみを持ってくるように伝えさせます。しかしらくだに家賃を一銭ももらっていない大家はきっぱりとそれを断わりました。「もってこないなら死体にかんかんのうを踊らせる」とのおどしにも屈しない大家さん。しかし兄貴分はくず屋にらくだの死体をかつがせ、本当に大家の目の前で踊らせてしまいました。こうして肝をつぶした大家から酒とつまみ、さらには八百屋から棺桶代わりの漬物樽を調達します。役目を終えて帰ろうとしたくず屋は、清めの酒を飲むように引きとめられます。一杯二杯と呑むうちに気が大きくなり、兄貴分との立場が逆転。今度はくず屋の指図でらくだを焼き場に運びます。えっちらおっちら、やっとの思いで焼き場に着いたところが、樽の中身は空っぽです。あわてて落とした亡骸を拾いにいったものの、死体と間違えてよっぱらいの坊主を拾ってきてしまうのでした。

【聴きどころ】
死体を踊らせるというおそろしい一席。その破天荒な行為は、ブラックユーモアを通り越して、一種怪異なおかしみを引きだしています。また、ひと仕事を終えたあとに飲む酒で、くず屋がしだいに正体をなくしていくさまが、酒飲みの生態を映してなんともリアル。それまで恐れていたらくだの兄貴分との立場が、酒の力で次第に逆転していくところが、この噺のひとつのクライマックスとなっています。

【もうひと言】
死んだ大男のあだなが「らくだ」とはちょっと奇妙に思われるかも知れません。しかし江戸時代、ラクダは見せ物として各地をめぐり、庶民に人気の舶来の“珍獣”でした。また死体に踊らせた「かんかんのう」もやはり人気の俗謡で、意味不明の中国語をおもしろがって歌い踊った庶民の芸能です。

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