紺屋高尾

花魁に恋わずらいの職人、3年分の給金を手に吉原へ（落語随談付き）

【あらすじ】
神田紺屋町にある染物屋で働く、職人の久蔵。所帯を持つことになったと親方の吉兵衛に報告するが、よく話を聞けば相手は当世一の花魁である高尾太夫。吉原で花魁道中を見て、勝手に一目惚れしたのだという。呆れた親方が「絶対に無理」と諭すと、ウブな久蔵はショックで寝込んでしまった。困った吉兵衛は「3年働けば、高尾太夫に会える金が貯まる」と激励。3年後、染物職人の身分を隠して醤油屋の若旦那に扮した久蔵が、大金を携えて吉原へ向かう……。

【聴きどころ】
憧れの高尾太夫と一夜を共にした久蔵。明くる朝、「こんどはいつ来てくんなます」と聞かれ、「お金が無いのでまた3年後」と泣きながら身分を明かします。真実を知った高尾は、久蔵の嘘を怒るどころかその一途さに涙をこぼし「来年の3月に年季が明けたら、女房にしてくんなますか」と逆にプロポーズ。ほろりと涙も誘う人情噺を、遊雀さんがしっとりと聞かせてくれます。

【もうひと言】
雲上の人として登場する花魁の「郭（くるわ）言葉」が実に印象的。約束の日に染物屋の前に現れる高尾と、それを見た親方や職人たちの狼狽ぶりには笑いを超えた爽やかさがあります。落語特有の下げはなく、晴れて夫婦となった久蔵と高尾が、親方の助力で新しく紺屋を開くという後日談が噺の締めくくり。美しい花魁が店番をしている久蔵の店が繁盛したというハッピーエンドです。

[収録：2007年10月20日　文鳥舎（東京・三鷹）]

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