幇間の炬燵

酒が燃料！　ニンゲンこたつ（落語随談付き）

【あらすじ】
「寒くて眠れません」。奉公人たちが番頭さんに、新しい布団がほしいとうったえます。しかし番頭は「辛抱しろ」とそれを一蹴。とはいえ、じつは番頭さんも炬燵ひとつ使っておらず、たいへん寒い思いをしていたのでした。そこで思いついたのがちょっと変わったアイデア。幇間（たいこもち）の一八を呼んで酒を飲ませ、かっかと熱くなったところで、炬燵代わりにしてしまおうという計略です。五合の酒とおこづかいをもらえると聞いて、一八はその案を了承し、酒を飲みはじめます。酔いが回ってきたところでいよいよ人間炬燵の出番です。あたたかな炬燵に足を乗っけて、番頭はじめ奉公人一同、すやすやと眠りにつくことができました。ところが、寝ぼけた小僧のおかげで、せっかくの計画は台無しになってしまったのです。

【聴きどころ】
飲むほどに正体がなくなっていく幇間。はじめのうちは酒やつまみをほめながら、気持ちよく飲んでいます。しかし、やがてばか笑いに混じって、一発一円で客に殴られた話や、嫁をもらえない悲しみを、ぽろりぽろりと吐露しはじめます。「人間炬燵になれ」という無茶な願いも職業柄断われない、タイコモチの悲哀を感じさせる場面です。

【もうひと言】
もともとは「按摩の炬燵」という上方由来の落語。桂文楽で有名なこの噺、ほんらいは按摩を炬燵代わりにするところですが、おなじみ幇間の一八を炬燵にしたのが、喜多八師の一工夫。炬燵になってくれという理不尽なたのみを勢いでのんでしまう場面も、幇間ならありそうなことだと思わせます。

[2008年2月9日　毘沙門天善国寺（東京・神楽坂）]

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