船徳

粋でいなせな船頭がいうことにゃ　（落語随談付き）

【あらすじ】
家を勘当された若旦那の徳三郎、馴染みの船宿に居候しています。ごろごろばかりしている若旦那に親方が「なんかおやんなさい」と小言をいうと、なんと船頭になると言い出します。浅草観音様の四万六千日、暑いので埃を避けて船で大川（隅田川）を上ってお参りに行こうと馴染みの客が船宿にやってきます。乗り込む前に髭を当たったりして、徳三郎はすでに一人前の乙な船頭を気取っています。ところが竿は落とすは、船がぐるぐる回るは、石垣につけてしまうはで大騒ぎ。船は次第に流されていきます……。

【聴きどころ】
夏を感じさせてくれる噺。眼前に川面が揺れているような気分になれます。徳三郎、格好ばかりつけていますが、船頭としてはまことにヤワで心細いかぎり。文句を言う客に青息吐息で「船なんてなかなか自由になるものじゃないんですよ。あなたがた、漕いでごらんさない！」と逆ギレしてしまいます。マクラでは内緒の内輪話など、たっぷりと聞かせてくれる喜多八師匠、桟橋につく前にごくあっさりとサゲています。

【もうひと言】
マクラでこの噺が古今亭のお家芸であることにも触れていますが、この噺は初代古今亭志ん生が作ったとされ、「お初徳兵衛　浮名の桟橋」という色恋の噺でした。その始めの部分を初代三遊亭円遊が今のような滑稽味の強い噺に仕立て直したそうです。徳三郎が漕いだと思われる猪牙船（ちょきぶね）は小型でスピードと小回りのきくのが身上、船頭も粋でいなせなイメージだったようです。若旦那が憧れるのも無理はありません。

〔収録：2007年5月8日　東京・文鳥舎〕

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