茶の湯

ぶくぶく泡立つ知ったかぶり茶道　（落語随談付き）

【あらすじ】
身代を息子に譲ったご隠居は、日々の退屈さからなにかお稽古事をはじめたいと考えます。そして思いついたのがかねてから興味のあった「茶の湯」。だれに習うこともなく、記憶をたよりに小僧定吉とともにお茶をはじめてみますが「はじめに入れる青い粉」が何なのかすらわからない始末。奇妙きてれつな茶の湯で悦に入っていたご隠居ですが、ついには身体をこわし、お茶を続けられなくなってしまいます。そこで三軒の店子に手紙を出し、茶席に招待しましたが、三軒が三軒ともお茶の作法をしりません。恥をかくくらいならと、かれらは引っ越しの準備をはじめてしまいます。

【聴きどころ】
定吉の早とちりをご隠居がもっともらしく理屈づけ、かれらの茶の湯は道具も作法も無茶苦茶なものになっていきます。ことに、ご隠居と定吉のどうにも気持ちの悪いお茶の飲みっぷりはなんともリアルで、こちらまでげっぷが出そうになってしまいます。また本作に登場するご隠居、小僧、豆腐屋、鳶の棟梁、手習いの先生など、多種多様なキャラクターの演じ分けも鯉昇師匠の聞かせどころです。

【もうひと言】
ご隠居の知ったかぶりから、本作では茶せんが「座敷ざさら」、茶杓が「ゾウの耳かき」、棗（なつめ）が「アンズ」、袱紗が「雑巾」になってしまいます。炭の起こし方からお茶の飲み方まで、荒唐無稽なご隠居の流儀は、茶道の心得があるひとならそのおかしみが増すことうけあいです。

〔収録：2007年7月10日　東京・文鳥舎〕

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