質屋庫

質屋の蔵はお化け屋敷？（落語随談付き）

【あらすじ】
質屋の旦那が、店の三番蔵で丑三つ時に化け物が出るという噂を耳にします。こんな噂が立っては、商売にも差し支えがあると、番頭に蔵の見張りをして正体を見届けるように言いつけます。ところが、気が小さい番頭は、そんなことをするぐらいならば店を辞めたいと言い出す始末。それでは助っ人を頼もうと、腕っ節の強い職人の熊に来てもらいます。普段から強がっていますが、じつは熊は化け物が大の苦手。番頭と熊は蔵の見える離れに陣取るのですが、用意してもらった酒肴も恐怖で味がわからないという体たらく。すると、丑三つ時に戌亥の方から火の玉が飛んできました。ふたりは腰を抜かしてしまいますが、這いながら蔵を覗きに行きます。

【聴きどころ】
サゲ近くで幽霊が出てきますが、陰気にはならず、笑いが多い、楽しい噺です。大店の質屋をめぐるさまざまな人物が登場し、後半には鳴り物も入ります。前半で旦那に呼びつけられた熊が酒をくすねたことがばれたと勘違いして、旦那にいきさつを告白する、追い詰められてしどろもどろの言い訳をする様子は、鯉昇落語ではよく登場する、おなじみの人物造形です。

【もうひと言】
大事なものを質屋に預けざるをえなかった人たちの無念の思いが蔵で幽霊となるのだ……とは旦那の見立て。サゲは、讒言にあって、太宰府に左遷された菅原道真（天神様）の故事に引っかけています。人々に学問の神様として親しまれた道真、原話も古く安永ごろからあるようです。

[収録：2008年7月5日　コア石響（東京・四谷）]

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