てれすこ

頓知は身を助ける（解説付き）

【あらすじ】
長崎の港で得体の知れない魚があがりました。「これはいったいあんちゅう魚だんべえ」と漁師たちは奉行所に持ち込みますが、魚のプロでもわからないものが、奉行にわかるはずもありません。困った奉行は魚の絵に「このものの名前を存じおる者申し出よ、金百両遣（つか）わす」と文を添えた高札を立てます。これを見た本町二丁目・多度屋茂平が奉行所に出向き、その魚の名前は「てれすこ」であると申し出ます。奉行は訝しく思いますが、知らないのですから否定のしようがありません。やむなく百両を渡します。納得できない奉行が今度はこの魚を開いて干物にした絵で高札を立てると、はたして茂平がまた奉行所にやってきて、この魚の名前は「すてれんきょう」だと言います。「かかりおったな、馬鹿者め。あれは過日と同じ魚である。一つ魚に二つ名をつけて上（かみ）をたぶらかし、百両騙（かた）らんとしたこの不心得者めが！」。茂平は捕らえられ、牢屋に入れられてしまいます。

【聴きどころ】
まんまと百両せしめて、もう百両もらおうと欲をかいた茂平は人生最大のピンチを迎えてしまいますが、頓知を使って落語らしく笑いを誘う結末を迎えます。魚の名前をめぐって長崎の奉行所と庶民が知恵比べをする、珍しい噺です。「てれすこ」「すてれんきょう」などの摩訶不思議な名前も、長崎らしい雰囲気です。夢吉さんは先代桂文治師匠の裏話や食品偽装の時事問題など、言葉をめぐるクスグリを随所にはさみこみ、笑いを誘います。

【もうひと言】
近世初期には「生で『ほほらほ』、干して『くくらく』」という名の魚の笑話があります（『落語三百題』による）。各地の民話としても再録されているということです。言葉の頓知でお上を翻弄する、口の減らない庶民のイタズラでしょうか。

[収録：2008年6月18日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）]

《携帯電話・スマートフォン（iPhone、Xperia等）、通信機能内蔵タブレット（iPad、GALAPAGOS等）、通信機能内蔵音楽プレーヤー（iPodTouch等）等へは「ダウンロード及び保存」はできません。お手数ですがパソコンでダウンロード後、お手持ちのデバイスへ同期頂き、お楽しみください。》