寄合酒

乾物屋の憂鬱（解説付き）

【あらすじ】
町内の若い者が大勢集まって二升の酒を飲むことにしますが、肴がありません。そこで一度家に帰って肴を持ち寄ろうということになります。ところがみんなが持ってきたのは干鱈、数の子の塩漬け、鰹節と、貧乏なのに高価なものばかり。問いただすと、みんな表の乾物屋をだまして持ってきてしまったことが判ります。そのなかで与太郎は「あ、あたいはね、お味噌持ってきた」と言うのでみんなは感心しますが、それが裏のはらっぱに「落ちていた」ものだというではありませんか。一転してみんな青ざめます。

【聴きどころ】
寄合酒のために乾物屋や野良犬がひどい目に合います。どうやって乾物屋をだましたのかをみなが自慢する場面は、ふてぶてしいのにどこか愛嬌のある若い者を文左衛門師匠が滑稽に描いて笑いの連続です。与太郎が「拾ってきた」と称する怪しげな味噌にいたっては、こわごわ舐めて確かめる男の姿が痛々しいほどリアル。音と語りの間から想像して楽しんでください。

【もうひと言】
落語に出てくる若い者は昼間からお酒ばかり呑んでいるようですが、職人は一つの仕事が終われば、しばらく暇になります。雨で仕事にあぶれたりすることも多く、みんなで集まる余裕もあったようです。この噺にはこのあと、せっかくの肴をだいなしにしてしまったり、「ん廻し」で遊びながら酒を飲むドタバタがありますが、文左衛門師匠は途中でさくっと落としています。

[収録：2009年1月20日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）]

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