幇間腹

たいこ持ちで生体実験？

【あらすじ】
大店の若だんな、暇をもてあましています。面白いと思えることはみんなやってしまいました。そんな折、父親のところに鍼医が訪ねてくるのを見かけて、自分もひとつ鍼を打ってみようと思いつきます。さっそく鍼を買いこんで、試しに壁や猫に打ってみますが、どうも面白くない。無謀にも人間に打ってみたくなった若だんなは茶屋に出掛けて、馴染みの幇間（たいこ持ち）の一八を呼び出します。何も知らない一八は張り切って若だんなの機嫌をとりますが、若だんなの魂胆を知って怖じ気づきます。

【聴きどころ】
「さっ、今日はどういうことンなります、若だんな」。幇間の一八の流れるように繰り出されるお世辞は見事です。雲助師匠の演じる一八はただ調子がいいだけでなく、ほんのり色気も感じさせます。それだけでなく苦労知らずの若だんなに理不尽な要求をつきつけられても、嫌な顔をせずに従う一八のプロ根性は見事。馬鹿馬鹿しくて笑える噺なのですが、お座敷芸人の厳しさともの哀しさもチラリと感じさせます。上演当時盛り上がっていたFIFAワールドカップを絡めたくすぐりには爆笑です。

【もうひと言】
原型は元禄あたりからある小咄のようですが、これは患者を殺して逃げてしまうというひどいもの。上方の「鍼の稽古」（「年忘れ噺角力」所収、安永5年　1776）がもっとも近い筋立てです。

［収録：2010年6月15日　内幸町ホール（東京）］

《携帯電話・スマートフォン（iPhone、Xperia等）、通信機能内蔵タブレット（iPad、GALAPAGOS等）、通信機能内蔵音楽プレーヤー（iPodTouch等）等へは「ダウンロード及び保存」はできません。お手数ですがパソコンでダウンロード後、お手持ちのデバイスへ同期頂き、お楽しみください。》