試し酒

すごい飲みっぷり。

【あらすじ】
近江屋の主人が訪ねてきたので、大店の旦那が酒の席に誘いますが、近江屋に断られてしまいました。残念がる旦那に、近江屋は連れてきた下男の久蔵が一度に五升もの酒を飲むような酒豪だと話します。そこで旦那は久蔵に勝負を持ちかけます。五升の酒を飲めたら小遣いをやろう、そのかわり飲めなかったら近江屋が旦那を料理屋へ招待することとなりました。久蔵は、もし飲めなっかたら自分の主人が散財してしまうと気をもみますが、なにやら考えている様子。ちょっと席を外した久蔵はやがて二人のところに帰ってきて、一升も入る大きな盃でぐびぐびと酒を飲み始めます。すごい勢いです。

【聴きどころ】
下男の久蔵が、一挙に大盃を空けるシーンは痛快です。それを傍らで眺めている旦那がたも実に楽しそうです。賭けはどちらにころんでも楽しみが待っており、誰ひとりいやな思いをする者はいません。ウワバミのような久蔵が盃を重ねるごとにだんだん酔ってくるさまが見物。文左衛門師匠の飲み方には酒の香りがしてきそうで、やっぱり迫力があります。

【もうひと言】
中国の小話が原話だそうですが、大正から昭和にかけての落語速記者であった今村信雄の代表作。シンプルですが、ちょっとした場面転換が食い違ってしまうだけでも、つまらない噺になってしまうかもしれない、難しい噺です。歴代の噺家は盃が増えるごとに、飲む本人が話したり、間接的に描写したりと工夫していたようです。

［収録：2010年11月13日　フジテレビ・シアターモール内マルチシアター（東京・台場）］

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