噺家の夢

落語家が訪れた“夢のような土地”とは？　（落語随談付き）

【あらすじ】
旅先の田舎家でひと晩泊めてもらった東京の噺家、朝、家の主に腹ペコだというと、漁師が網を打っているからそこで魚を買ってこいとのこと。行くと漁師たちがよそ者に高く売りつけようと企んでいる様子。恐る恐る値を聞くと、鯛一匹がたったの一銭。あまりの安さに驚く噺家に、漁師は高すぎたかと言って、「鮑十杯と伊勢海老十匹をつける」！　さらに驚く噺家には、鮪十本もつけ、しまいには鯨までつけようと言い出します。噺家が鯛一匹でいいと五銭出し、釣りはいらないというと、今度は漁師たちが腰を抜かしました。「今日は漁場は休みにすべえ。今夜は村で祭りやんべえ！」。けげんな心持ちで田舎家に戻った噺家は、泊めてもらったお礼にと主に十銭渡すと今度は主がびっくり仰天、「孫子の代まで安楽に暮せるだ」。何かの冗談と思っていた噺家も、これは相場の変わったいい土地だ、懐に三十円はあるし、生涯ここで暮してやろうと決心するのですが……。

【聴きどころ】
家の主と漁師たちが繰り出す田舎言葉が強烈です。喜多八師は声の調子やトーンに極端にメリハリを利かせているので、彼らが驚がくするシーンなど、つい吹き出してしまうでしょう。

【もうひと言】
『一眼国』のような、どこかおとぎ噺めいた不思議な雰囲気を持っている噺です。かつて四代目三遊亭円遊が十八番にしてよく演じていたそうですが、最近では喜多八師一門のほか、あまり寄席では聴かれない貴重な噺のひとつです。

〔収録：2007年2月17日　東京・文鳥舎〕

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