居残り佐平次

口先三寸、二円で豪遊　（落語随談付き）

【あらすじ】
佐平次は仲間をあつめ、ひとり2円で遊廓に行こうと提案しま す。品川で芸者をあげての豪遊の末、佐平次がいうには「おれは居残る」。ハナから勘定を払う気などなかった佐平次はなんだかんだと言い逃れをして勘定をごまかし続けますが、ついに無一文だとバレて、布団部屋に押し込められてしまいます。ところが話がうまく芸達者な佐平次は酒の相手にもってこいだとお客のあいだで大評判、ついには「居残りを呼べ」と口がかかる始末。ご祝儀をもっていかれておもしろくない若い衆たちはついに旦那に注進するのですが……。

【聴きどころ】
まくらではアンニュイなキャラクターでとつとつと語る喜多八師匠ですが、いざ本文となると、とたんに口調が生き生きとしてきます。ことに佐平次が勘定をごますために、次から次へとくり出す景気の良いウソの数々で、相手を煙に巻いてしまう場面は圧巻。太鼓持ち顔負けの佐平次の描写が、これまたはじけています。勘定を踏み倒してしまう佐平次なのに、そのキャラは悪人じみておらずむしろ痛快。そんな風に感じさせる師匠の話芸にも注目です。

【もうひと言】
佐平次が旦那をだます場面で口にする「餓鬼のときから手癖が悪く……」は白浪五人男のセリフ。また、この噺のもとのサゲは「おこわにかけた」「それはあなたの頭がごま塩だから」というものでしたが、「おこわにかけた」＝「いっぱい食わした」の意味が現代では通らないため、喜多八師匠は別のものに工夫をしています。本作を元ネタにした映画としては日活喜劇の傑作『幕末太陽傳』（フランキー堺主演）が有名です。

〔収録：2007年7月10日　東京・文鳥舎〕

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