反対俥

ブラック・スラップスティック・コメディー（解説付き）

【あらすじ】
神田で飲み過ぎてしまい、上野発の終電車に間に合わないと、人力車を探す男。ところが、はじめの俥は汚れている上に、愚痴ばかりこぼして足が遅く、とても終電車に間に合いそうにありません。次に乗った俥は威勢はいいのですが、逆にやたらと速くて、「あらよ、あらあらあらよっ」と踏切もニワトリ小屋もお構いなしにひたすら駆け抜けます。道中の果てに着いたところは何と……。

【聴きどころ】
かつてのテレビ番組「落語特選会」─この番組をきっかけに落語好きになった人も多いのではないでしょうか。ブラック師の「反対俥」が落語中継番組の中で紹介される様子をブラック師が語るという、劇中劇のような構成に驚かされます。加えてこの中の故・榎本滋民氏に本編に入る前に「この噺は駄作ですねえ」と言わせてしまう演出など、何とも人を食っています。ブラック師の生き様を映しているのか、捨て身ともいえる話しぶりには凄みさえ感じます。

【もうひと言】
いろいろな仕掛け、黒澤明からテポドンまで、クスグリもふんだんにまぶしながら、場内を駆け回り、スラップスティック・コメディーのようですが、人物の演じ分けなどは、むしろ正統的です。

[収録：2007年11月29日　お江戸日本橋亭]

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