酢豆腐

若旦那、それ食べるの？（落語随談付き）

【あらすじ】
新吉がもらいものの三升の酒で楽しもうと町内の若い者を集めますが、肴を買う銭がありません。ぬかみその古漬けならよかろうと話はまとまりますが、ぬか床に手をつっこむのを皆嫌がり、誰も手をつけません。そこへ通りかかった半公を「小間物屋のみい坊がおまえに岡惚れしてる」と持ち上げて、肴代として一円出させることに成功。つなぎに、ゆうべの豆腐の残りを出してみましたが、与太郎が、釜に入れてふたをしてしまいこんでいました。釜のふたを開けてみると、案の定豆腐は腐ってしまってカビだらけ、なんともいえない異臭を放っています。捨てようとしますが、キザで半可通の伊勢屋の若旦那を通りに見かけた新吉は、この腐った豆腐を食べさせてみせると、若旦那を呼び込みます。

【聴きどころ】
気候が夏らしくなってくると聞きたくなる一席。菊之丞師匠の十八番でもあります。前半は町内の若い衆が酒の肴をめぐって繰り広げる、テンポのいい明るくとぼけた会話がおかしく、半公がみい坊のうわさ話で鼻息の荒くなる場面など、古今亭志ん朝師匠の語り口を彷彿とさせます。後半の「おや、まあ、こんつわ～」など、面妖な言葉遣いとなよなよした仕草でみんなを気持ち悪がらせる伊勢屋の若旦那ですが、どこかにかわいらしさもあるのは菊之丞師匠の人柄ゆえでしょうか。若旦那が豆腐の臭気に悶絶するさまは爆笑ものです。

【もうひとこと】
上方ではテレビドラマにも取りあげられた、「ちりとてちん」という題名で知られます。明治中期には石鹸を銀紙で巻いたものをケーキだといって食べさせる、「あくぬけ」という改作もあったとのこと。

［収録：2008年5月17日　コア石響（東京・四谷）］

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