堪忍袋

ストレスは袋のなかへどうぞ。（落語随談付き）

【あらすじ】
大工の八公とおさきの夫婦が大喧嘩をしています。大家が止めに入ってわけを聞くと、八公が弁当の梅干しは飽きたからたくあんにしてくれと言ったのがそもそもの始まり。呆れた大家は、夫婦の言い分を聞いて「おまえさんたちは思ってることをそのまま言うから喧嘩になるんだ。“堪忍袋”を作ってその中に文句を大声で吹き込んで、ひもで口を縛りなさい」と助言します。やってみるとこれが効果抜群、ふたりは喧嘩しなくなりました。この噂を聞きつけた近所の連中が、しょっちゅう堪忍袋を借りにくるので悪口雑言でぱんぱんになってしまいます。中身をおいそれと捨てるわけにもいかず困っているところに、伊勢屋の女房がやってきて堪忍袋を貸してくれと言います。

【聴きどころ】
はたで聞いたら馬鹿馬鹿しいような理由で言い争いになるのは夫婦喧嘩の常ですが、遊雀師匠は怒り心頭に発して自分でも訳が分からなくなったときの可笑しさを描いて出色。まるで任侠映画の主人公のようなドスの効いた八公の声色も遊雀師匠らしいデフォルメ、脇でおさきの泣きじゃくる様子に、大家があたふたするのが目に見えるようです。ある師匠の手拭いが堪忍袋に見立てられているのもご愛嬌。サゲはぱんぱんになった堪忍袋が……なのですが、遊雀師匠は一工夫しています。

【もうひと言】
益田太郎冠者（1875〜1953）による、明治の新作。益田は三井財閥の大番頭で明治･大正の財界の大立者･益田孝（鈍翁）の長男です。大正初期に、帝劇のオペレッタを多数制作すると同時に「堪忍袋」や「宗論」などの新作落語を多数創作しています。

［収録：2008年7月5日　コア石響（東京・四谷）］

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