千早振る

コテコテ関西風味「千早振る」（解説付き）

【あらすじ】
あわて者の男がご隠居のところに駆け込んできます。「わて、今〈ひゃくにんひとくび〉に凝ってまんねん」「……？」よく聞けば「百人一首」のことでした。男に「ざいはらぎょうへい（在原業平）」の「千早振る神代も聞かず竜田川からくれないに水くくるとは」という歌の意味を教えて欲しいと言われるのですが、じつは知らないご隠居さんは、浪曲風に歌ってみたりしてごまかそうとします。ところが、「もしかして知らんのとちゃいまっか？」とつっこまれ、知らないとは口が裂けても言いたくないご隠居さん、苦し紛れに「竜田川とは相撲取りの名前や。千早とは花魁の名前や……」と珍解釈が始まります。あとはもう、堰を切ったようなご隠居ワールド。

【聴きどころ】
お馴染みの噺でも、腕のある噺家さんが演じると「こんなに面白い噺だったっけ？」と再発見することがありますが、この「千早振る」もまさにそのひとつ。江戸版のご隠居さんののんびりした雰囲気などどこへやら、「コテコテの大阪のおっちゃん」風なご隠居がユニーク。浪曲、講談、河内音頭、浄瑠璃といった芸をさりげなく織り交ぜているところもさすが。上方落語の底力を感じます。

【もうひと言】
百人一首の珍解釈をめぐる笑話は古くからあり、江戸後期の随筆類にも取りあげられています。「千早振る」は、これらをもとに上方落語の中興の祖・桂派の創始者である初代桂文治（1773～1815）が作ったもののようです。

[収録：2008年11月8日　関交協ハーモニックホール（東京・西新宿）]

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