お見立て

杢兵衛が泣いているところを聴いて笑え

【あらすじ】
杢兵衛は吉原の花魁・喜瀬川の上得意なのですが、喜瀬川は野暮天で田舎者の杢兵衛のことが大嫌い、たとえ相手が客であっても我慢することができません。この日も杢兵衛は喜瀬川をお見立てして見世に上がったというのに、喜瀬川は杢兵衛に会おうともしないので、これではいけないと見世の若い衆が早く杢兵衛の座敷に上がるよう催促すると、「私はもう二度と杢兵衛の座敷には上がりたくない」と言い出す始末。しかも、杢兵衛と顔を会わせたくないばかりに、「私はとうに死んでしまったと言ってくれ」と若い衆に命じます。喜瀬川にそう言われた若い衆は逆らうこともできず、杢兵衛に喜瀬川が死んだと嘘をつくと、杢兵衛は泣きながら喜瀬川の墓参りをすると言い出し……。

【聴きどころ】
遊雀師の魅力の一つに「過剰」があります。この噺でも杢兵衛お大尽の「泣き」の場面で、その「過剰」が十全に発揮されています。この場面を聞くだけでも、遊雀版『お見立て』を聴く価値があるでしょう。『熊の皮』『初天神』それにこの『お見立て』を加えて遊雀三大噺と呼べるほど出来のよい一席です。

【もうひと言】
映画『幕末太陽伝』は落語の『居残り佐平次』を骨子にしていくつかの落語のエピソードをちりばめて作られた名作で、この作品のラストの場面こそこの『お見立て』の焼き直しです。もしも『幕末太陽伝』を見る機会があれば、その後に是非この落語を聞いてみて下さい。

[収録：2009年3月7日　文鳥舎「遊雀しばし独り会」（東京・三鷹）]

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