青菜

通り一遍の善人より血の通った人物

【あらすじ】
今日の仕事も終わったというので、植木屋さんが出入りのお屋敷の旦那のお酒の相手をすることになりました。それだけでも植木屋さんにしてみればありがたいことなのに、旦那が御馳走してくれるものというのがこれまで食べたことのない高級なものばかり。柳陰という酒を飲みながら、鯉の洗いを肴に一杯やっていると、旦那が青菜を御馳走しようと言ってくれます。そこで奥さんに青菜を持って来るよう命じたところ、奥さんが言うには「鞍馬から牛若丸がいでまして、その名も九郎判官」。それを聞いた植木屋さんはわけがわからず……。

【聴きどころ】
愚かな者が教わったことを真似して誰彼なしに吹聴して失敗するやりとりを落語の世界では、鸚鵡返しという言葉から「オーム」と呼んでいます。そういう噺は基本的には前座噺に多いのですが、この『青菜』はそのオームの噺の中では珍しくトリネタにもなる演目であり、またオームの掛け合いの面白さをたっぷりと堪能できる噺でもあります。

【もうひと言】
文左衛門師の演じる植木屋さんは他の噺家さんのものと少しキャラクターが違います。他の噺家さんが演じる植木屋さんは旦那の前ではただひたすら大人しい純真無垢な好人物ですが、文左衛門師が演じると、少し小ずるいところもあった上で、そのくせ憎めないという人物に造形されています。通り一遍の善人よりも血の通った人間の方が文左衛門落語には似合うようです。

[収録：2009年3月28日　文鳥舎（東京・三鷹）]

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