えびすの町にビルが飛ぶ　～甦った伝説の実験落語コレクション2

100階建てのビル屋上に大農園！

【あらすじ】
恵比寿の町に百階建てのビルを建てる計画がもち上がりました。町は地上げが進んでいますが、しかし八百屋の源さんはただひとり立ち退きに応じず、都会の真ん中でいまだ農業を続けております。そこで町会長の中曽根氏は提案しました。「新しいビルの屋上を畑にしましょう」。それに対し源さんは、ビルの周囲をめぐるらせん状の農道を作れと無茶な要求をします。そしてなんとこの要求が通ってしまいます。ビルが完成してしばらくは評判になりましたが、しだいにビルはさびれていき、ついには廃虚と化してしまいます。ところが、まるで自然の山となったビルの頂上から八百源大明神こと源さんのありがたい声が聞こえてきて…

【聴きどころ】
実験落語の重要メンバーである夢月亭清麿師。今回は噺を現代に合わせることはせず、あえて当時のままに演じています。登場人物の名は中曽根氏や田中（角栄）氏、科学者の糸川氏といった「ときの人物」。また地上げなどの社会現象をも織り交ぜて、かつての渋谷ジァンジァンの空気をそのまま封じ込めた、記録的な一席となっています。バブルの崩壊 を予言したかのようなビルの変遷の描写や、痛烈な皮肉のきいたSF的サゲなど、当時最先端の噺にきっと驚かされることでしょう。

【もうひと言】
噺に登場するのは今ではなつかしいCM。「野菜も食わにゃだちかんぞ」は野菜ジュース、「リンゴをかじると……」は歯磨きのCMでした。また女性誌『微笑』は現在では廃刊となっています。

★「実験落語」は1970年代後半に渋谷ジァンジァンなどを舞台に繰り広げられた新作落語の会で、三遊亭円丈を中心に、柳家小ゑん、夢月亭清麿、林家しん平など当時の血気盛んな若手噺家たちが結集し、熱いムーブメントをつくりだしました。本作品は2007年8月18日に開催された「甦った！　伝説の実験落語特集」（「無限落語」第10回、お江戸日本橋亭）で収録されたものです。

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