竹の水仙

既成の「竹の水仙」をぶち壊す

【あらすじ】
どう見ても金を持っていなさそうな男がもう何日も宿屋に泊まっています。心配した宿屋の主が宿賃の催促をしたところ、案の定男は金を持っていないと白状しました。そこで男は宿代を稼ぐためにと、刈って来た竹を材料に置物を作ります。この竹でできた水仙を宿屋の前に置き、前に「売り物」と書いた札を下げておけば誰かが必ず買ってくれるので宿賃の方は心配がない、と男は言うのですが……。

【聴きどころ】
この落語の主人公の正体は噺の後半で明らかにされますが、実はとても有名な歴史上の実在の人物です。だからでしょう、他の噺家さんがこの噺を演じる時、主人公の男は貧しいながらもどこか飄々とした気高いところがあるのですが、同じ男を文左衛門師が演じると、あくまでもワイルドで既成の『竹の水仙』の登場人物とはひと味もふた味も違います。文左衛門落語に登場する人物は誰もがどこか文左衛門師に似ています。そこが落語の楽しさであり、文左衛門落語の楽しさでもあるのです。

【もうひと言】
落語の中には甚五郞ものと呼ばれるシリーズがあり、この『竹の水仙』はその中の一席です。関西を旅立って東海道を江戸へ向かった左甚五郞はまずその途中の鳴海の宿で竹の水仙を作り、続いて江戸で大黒を、そして最後には仙台まで足を伸ばして鼠の像を作ります。甚五郞が仙台で鼠を作ったいきさつを描いた『ねずみ』という落語はラジオデイズでも配信しておりますので、興味のある方はぜひどうぞ。

[収録：2009年5月23日　文鳥舎（東京・三鷹）]

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