道灌

どうかんがえてもわからない、山吹の謎。（落語随談付き）

【あらすじ】
八五郎が町内の隠居のところに遊びに来ます。書画骨董が趣味の隠居の住まいにはあちこちに絵がかかっており、歴史を題材にした絵が珍しいのか、八五郎は「この変な絵はなに？」とご隠居を質問攻めにします。とくに山の中で俄の村雨に遭った太田道灌が、一軒のあばら屋で雨具を借りようとしたところ、少女に山吹の枝を差し出されて断られた故事を描いた絵を気に入ったようです。この山吹の花は「七重八重花は咲けども山吹の実の一つだになきぞ悲しき」という、兼明親王の古歌を踏まえた“実の＝蓑一つ”という断りの謎掛けでした。八五郎は誰かが雨具を借りに来たらこの和歌で断ってやろうと、ご隠居に歌を仮名で紙に書いてもらいます。折しもにわかに雨が降り出します。待ちかまえていると、友だちの留公が飛び込んできました。

【聞きどころ】
噺家の修業はこの噺から始まることが多いとか。前座さんがよくかけるお馴染みの噺ですが、「こんなに面白い噺だったのか」と文左衛門師匠で再発見すること請け合い。八五郎と隠居の会話が楽しいのですが、とくに無遠慮な八五郎のキャラクターはちょっとクセのある人物に仕上がっています。前半のいろいろな歴史画を題材にした掛け合いは、現在はあまり聞きません。文左衛門師匠は前半からたっぷりと演じていますが、なんともいえない絶妙の間で飽きさせません。

【もうひとこと】
山吹の謎が分からなかった道灌は、のちに修業して大歌人になるのですが、娘を城に招き、歌の友としたという逸話もあるそうです。

［収録：2008年3月1日　コア石響（東京・四谷）］

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