片棒・改

息をもつかせぬギャグの嵐（解説付き）

【あらすじ】
ケチで名の通った赤螺屋吝兵衛（あかにしやけちべえ）、年老いてきて三人の息子の中から跡継ぎを決めたいところですが、この三人がそろってどら息子。吝兵衛は三人を呼び集め、それぞれに自分が亡くなった時の弔いのやり方を聞いて跡取りを決めることにします。自分の身上である倹約ぶりを継いでくれる息子を選び出すためなのですが、長男でオカマのキンは大パーティを提案、「まず会場の真ん中に生け簀をつくってぇ…」。そしてギンは大パレードを提案、「まず甲子園で泣きじゃくってるヒステリックな女子高生を呼びます。その後に大駱駝館、そして宝塚のお姉様たち…」。父親の気持ちに相反して、豪華でムチャクチャな提案にげんなりした吝兵衛に三男テツは「お弔いといえども、これを商売の一環としか考えておりません」。これこそ自分の跡継ぎと、父親は嬉しくなりますが、「まず、人通りの多い交差点でパトカーに轢かれてもらいます！」どうも雲行きが怪しくなってきます。

【聴きどころ】
古典落語「片棒」の後にくっついた「改め」に要注意。もともと破天荒な噺ではありますが、談笑師匠によって現代風に強力にヴァージョンアップされ、アブナイ要素も盛り込まれた濃厚な作品に仕上げられています。長男のプランは美食と乱交の背徳的なパーティ。次男の派手なパレードのクライマックスはゾンビ役の父親が有名なねずみのキャラにやっつけられるというもの。兄たちとは腹違いで、なぜか母親がコルシカ島出身のユダヤ人の三男は冷酷な吝嗇ぶりを披露します。全編に時事的ネタも含めたギャグがポンポンとマシンガンのように飛び出してきて痛快です。サゲはかなりブラックです。

【もうひと言】
もともとは古い噺で、題名も“棺桶の片棒”に関わっていまが、現在このかたちはあまり演じられないようです。けちん坊の親父が自分の葬式に口を出す、という話は韓国・李朝にもあるそうです。

[収録：2008年11月18日　関交協ハーモニックホール（東京・西新宿）]

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