長屋の花見

貧しくたって、想像力があれば生きていける。（解説付き）

【あらすじ】
世間でも有名な貧乏長屋の店子たちに、大家さんから呼び出しがかかります。大家さんの猫を鍋にしてみたり、家に上がり込んでご飯を盗み食ったりとやりたい放題で、家賃もろくに入れていない店子たちは大家さんから小言をいわれるのだろうとびくびくしていますが、大家さんは花見に行こうと言い出しました。しかも大家さんがお酒ばかりか肴も用意しているというではありませんか。店子一同喜び勇んで出かけようとするところ、大家さんが「実は……」と種明かし。お酒はお茶に水をたしたもの、ウイスキーは醤油の水割り、かまぼこは大根を半月に切ったもの、卵焼きの正体はたくあんでした。皆の興奮は一気に冷めますが、今さら仕事に行くのも半端だし、半ばヤケで上野のお山に花見に出掛けることにします。

【聞きどころ】
ひどい貧乏ぶりの長屋。店子は「た・な・ち・ん……聞いた覚えがあるなあ」という体たらくですが、その店子たちを花見に誘い出すためにお茶にお水をたして酒瓶に詰めたり、大根をかまぼこ型に切ってみたりと不思議な努力をする大家さんもなかなかの粋人です。その大家さんにふり回される店子たちの奮闘ぶりが笑えます。本人はいたって真剣だけど、端から見ると、やはり可笑しい。おなじみの鯉昇節です。

【もうひとこと】
春爛漫、おなじみの一席。上方落語「貧乏花見」を明治末年に三代目蝶花楼馬楽（通称気狂い馬楽）が東京に移したものだといわれています。「酒柱が立った」などのギャグで落とすものや、騒ぎに紛れて本当のお酒にありつくことができるものなど、いくつかのサゲがあります。本編のサゲはやや珍しい部類に入るかもしれません。

[収録：2009年4月15日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）]

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