熊の皮

女房をこわがるぐらいがうまくいき

【あらすじ】
甚兵衛は、気の強い女房の尻に敷かれっぱなし。今日も仕事から帰ったとたんに炊事洗濯を女房から命じられます。その上、横丁の先生から赤飯を頂いたので、そのお礼に行ってこいと言いつけられます。お礼の口上を一通り教えられ、最後に必ず「女房がよろしく申しておりました」と付け加えろとまで指図されます。甚兵衛がしぶしぶ出向くと、ちょうど退屈していた先生は、抜けている甚兵衛が今日は何を言い出すかと興味津々。案の定、うろおぼえのため口上はほとんど意味不明です。

【聴きどころ】
前座さんがよくかけるあっさりした印象の古典も、遊雀師匠のアレンジで個性的な味わいになりました。先生は間抜けだけど正直な甚兵衛が好きなのですが、甚兵衛に「あっしはあんまり先生のこと好きじゃないすけど」とぼそりと言われると「そういうのが好きなんだよ」と快感を覚えるマゾヒスティックな変人。口上を述べる緊張に耐えかねた甚兵衛は、ついに泣き出してしまいますが、先生はそんな甚兵衛を見て笑っています。このふたりの会話に会場は爆笑の渦。遊雀師匠の魅力がぎっしり詰まっていて、初めて聴く人にも存分に楽しめる一席です。

【もうひと言】
安永年間からある古い噺で、同巧の小咄もいろいろとあるようです。もとのサゲは「熊の皮」の感触に引っかけた、ちょっと艶笑めいたものですが、遊雀師匠は前半～中盤をたっぷりと聞かせ、サゲはさらっと落としています。

[収録：2009年5月18日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）]

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