はははぁ家族

葬式の真似事をすると不眠症が治る？

【あらすじ】
不眠に悩む中年男が医者に行き、治療を受けたのですが、この男よりも肝心の医者の方が具合が悪そうです。それでも一応、睡眠薬を貰って家に帰ってきました。この男の妻は河豚の肝臓を食べても死なないほど丈夫な女性で、男の父親は一日中やたらと眠くて仕方がありません。つまりは二人はものすごい健康体ということで、男の不眠に対して全く同情していません。それでもとりあえず男の不眠を治してやろうと、羊の数を数えさせたり、催眠術をかけたりするものの、まるで効果がありません。ならば最後の手段とばかりに父親が、葬式の真似事をしたらよく眠れる、そういうまじないが昔はあった、と言い出します。そこでこの男を仏様に見立てて、葬式の真似事をすることになったのですが……。

【聴きどころ】
落語では上下（かみしも）と言って、噺家さんが顔を上手や下手に向けることで、噺に登場する人物を描き分けます。ところが福笑師はどの噺でも上下を一切使わないという特殊な演出をしています。では、その演出法でちゃんと人物が描き分けられるのか？　映像のない音源だけで落語を聞くことによって、福笑師の演出が正しかったことがよくわかる一席です。

【もうひと言】
福笑師は言葉に一家言持っている噺家さんです。とりわけ枕の随所にそのこだわりが現れています。かつて落語は庶民にとっての知恵袋のような存在でした。噺を聞くことによって、お客はちょっとした知識が得られたのです。そういう噺家が今はめっきり減ってきましたが、新しい落語を作り続ける福笑師の噺の中に、意外にそうしたよい意味で古い味わいが残っています。

[2008年12月6日　横浜にぎわい座（横浜・桜木町）]

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