伝説の組長

目撃者ゼロの武勇伝

【あらすじ】
がまぐち組の下っ端ヤクザ、辰は身分不相応にも組長と酒を飲む機会に恵まれます。この組長、さまざまな修羅場を乗り越え、がまぐち組の勢力を拡大した「伝説の組長」と異名をとる大物でした。「むかし話を聞かせてほしい」という辰の願いに応え、組長は抗争の武勇伝を披露します。あるときはドラム缶にコンクリート詰めにされ、またあるときは機関銃を持った200人の中国人マフィアに取り囲まれ、またあると きは目の前でダイナマイトが大爆発……。むちゃな話に戸惑う辰。そうこうするうちに、下っ端の辰が酒の席に呼ばれた理由が明らかになります。じつは組長がヒットマンに狙われているというのです。辰は身代わりとなって組長の布団に寝ることになります。やがて、布団のなかでおびえる辰の前に現れたのは組長のおかみさんでした。おかみさんは「前からあんたをええ男だと思っとったんや」と、辰に言い寄ってくるのでした。

【聴きどころ】
前半の聞きどころは、組長による酒の席での荒唐無稽な武勇伝。いよいよ大ピンチ、というところでスルリとかわす、たま師絶妙の話芸で、会場の笑いのボルテージをぐいぐいと引き上げていきます。さらに後半ともなれば、噺は「天狗裁き」や「ねずみ穴」もかくやという世界へ突入。何層にもたたみかけられるその物語構造は、夢と現実が交錯する、一種のパラレルワールドといった不思議な余韻を残すことでしょう。

【もうひと言】
「実験落語」の血を引く「無限落語」での一席にふさわしく、たま師匠は今回もマクラで「ショート落語」という実験的な落語スタイルを披露します。わずか4分弱のあいだに12本ものネタを凝縮し、ドカンドカンの爆笑で強引に会場を暖めてから、いざ、本編へと突入です。

[収録：2009年6月20日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）]

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