佃祭

あれま、生きてたのね！

【あらすじ】
神田お玉ヶ池の小間物屋の次郎兵衛は大の祭り好き。その日も佃祭りに出掛けました。最後の渡し船で佃島から帰ろうとしたところを、二十歳過ぎの女に呼びとめられます。三年前に吾妻橋から身を投げようとしているところを、次郎兵衛が助けた女なのでした。女の家に連れて行かれ、上へ下にも置かない歓待を受けます。おまけに女の亭主は船頭で、帰りは送ってもらえることになりました。ところが、船着き場では次郎兵衛が乗り損なった船が転覆したという大騒ぎ。今度は次郎兵衛が女に命を救ってもらったのです。一方、次郎兵衛の家では当人がしまい船に乗ってしまいおぼれ死んだと思い込み、女房はぼう然、近所の者たちがさっそく葬式の準備を始めます。

【聴きどころ】
次郎兵衛と女の感動的な再会が噺の核になっていますが、鯉昇師匠は女の亭主を江戸っ子らしい、すっきりした好人物として描くことによって、女の今の幸せぶりを浮かび上がらせています。そうした工夫でさりげなく噺に立体感を持たせるところが鯉昇師匠の持ち味です。一転して後半の次郎兵衛家の葬式騒ぎでは、師匠得意のおとぼけぶりでたっぷり笑わせてくれます。

【もうひとこと】
岡本綺堂はこの噺の原話を、中国・元の陶宗儀による説話「飛雲渡」ではないかと推測していますが、江戸時代に佃の渡し船が転覆した惨事が実際にあり、この噺と関係があるという説もあります。住吉神社の大祭と、春に捕れる白魚が佃の名物でした。

［収録：2010年9月18日　フジテレビ・シアターモール内マルチシアター（東京・台場）］

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