ぞろぞろ

お稲荷様、ああ勘違い

【あらすじ】
浅草の観音様の裏手にある小さなお稲荷様。このそばにあるこれまた小さなさびれた茶店。茶店のおじいさんがお稲荷様にお詣りに行って帰ってくると、久しぶりにお客があり、七年間売れ残っていたわらじを買っていきました。これもお稲荷様のご利益かと喜んでいると、またわらじを買いにお客が。先ほど売れてしまったので断ろうとすると、新しいわらじが天井からぶら下がっているではありませんか。売れると新しいわらじが天井からぞろぞろっと出てくるようになったのです。不思議なわらじが評判になり、茶店は大にぎわい。これを見た向かいの床屋が、「うちにもどうぞご利益を…」とお稲荷様に願掛けしますが。

【聴きどころ】
シンプルですが、嫌味がなくて落語らしい噺です。浅草の観音様の裏手という設定が効いており、人里離れたところよりも、よけいにわびしさを感じます。龍玉師匠は、東京っ子らしい無駄のない口調でさっぱりとまとめています。龍玉師匠は若いのですが、どこか老成した雰囲気があり、おじいさんも不思議と似合います。

【もうひと言】
もと上方落語で、初代橘ノ圓都(1883～1972)が得意にし、舞台は赤手拭稲荷（現・大阪市浪速区稲荷町）でした。明治期に四代目橘家円蔵（六代目円生の師匠）が浅草に舞台を移して、林家彦六師が練り上げました。江戸の舞台となったのは、浅草新堀川にあった太郎稲荷（四谷になっていることも）。ひどくさびれていたのが、急に流行ったり、また急にさびれたり、という変転の激しいお稲荷様だったそうです。現在は亀戸にあります。

[収録：2010年10月8日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）]

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