御神酒徳利

パチパチピタリのそろばん占い　（落語随談付き）

【あらすじ】
馬喰町の旅籠では年に一度に大掃除。二番番頭の善六は店の家宝の銀の徳利を水がめに沈めたまますっかり忘れてしまいます。やがてお宝がないと店中が大騒ぎ。今さら言い出せなくなった善六は女房の助言でそろばん占いをでっちあげ、みごと徳利のありかを言い当てます。ところが、このうらないの評判を耳にした豪商の支配人が、娘の病気を占ってほしいと申し出たから一大事。断りきれなくなった善六は大阪に向けて出発することになりました。さらに旅の途中、神奈川宿で巾着の紛失事件に遭遇し、またしてもそろばん占いを披露するはめになってしまいます。

【聴きどころ】
災い転じて福となすのことわざ通り、主人公善六の急場しのぎのインチキ占いが次々と成功し、財をなしていくという快心のサクセスストーリーが楽しめます。この善六、本当に運が良い。占う前にこたえを教えてもらったり、お稲荷さまが助けに現れるほどの強運の持ち主です。また弱気な善六と、亭主の災難にもうろたえず、どっしりと構えた女房のコントラストもみどころのひとつ。善六の成功もこの陽気な女房あってこそなのでした。

【もうひと言】
そろばん占いに出てくる艮為山（ごんいさん）や山水蒙（さんすいもう）は、それぞれ易の六十四卦のひとつ。父親が占い師だけあって、女房のでまかせもなかなか真実味があります。とんとん拍子に出世する主人公を描いた本話は、かつて三遊亭圓生が昭和天皇の前で一席を披露したこともあるという、たいへんおめでたい落語です。

〔収録：2007年7月15日　東京・文鳥舎〕

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