明烏

堅物の若旦那と冴えない遊び人、廓噺の代表作

【あらすじ】
日向屋の時次郎は、部屋で難しい本ばかり読んでいる。その堅物ぶりに将来を案じた父親は、息子を吉原に連れて行ってくれるよう源兵衛と多助に依頼。「お稲荷さまへお篭りに」と連れ出され、遊廓を「神主の家」、女主人を「お巫女頭」だと騙されて、うぶな時次郎はお座敷へ。ようやく真相に気づいた時次郎は帰ろうとするが、「大門の見張りに袋叩きにされるぞ」と脅され、やむなく花魁と一晩を共にする。夜が明けて源兵衛と多助が時次郎の部屋で見たものは…。

【聴きどころ】
舞台は吉原の遊廓。そこに騙されて連れてこられた時次郎の堅物ぶりが笑いを誘います。遊び人の源兵衛と多助、したたかな遊廓の女主人などの多彩なキャラクターを、文楽師が色鮮やかに演じ分ける廓噺（くるわばなし）の名演。一夜を過ごした時次郎の豹変ぶりや、遊女に逃げられてちっとも冴えない源兵衛と多助の様子などに、細やかな笑いの種が潜んでいます。

【もうひと言】
桂文楽がこの噺を高座にかけると、売店の甘納豆が売り切れたという逸話がありました。噺の中で源兵衛が甘納豆を食べ続けるという小さなくすぐりがありますが、その芸の巧みさに引き込まれた客たちが思わず幕間で甘納豆を買いに立ったという、いかにも名人らしい伝説です。

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