不動坊

ぬけがけする奴、許さねえ。

【あらすじ】
吉公は長屋の大家の世話で嫁をもらうことになりました。相手は同じ長屋に住むおたきさん。おたきは講釈師・不動坊火焔（ふどうぼうかえん）の女房でしたが、不動坊が旅先で亡くなってしまい、後家になったのです。嫁として迎えるには、亭主の残した借金も一緒にひきうける条件ですが、吉公のほうは、かねてから岡惚れしていたおたきさんとあれば願ってもないこと。さっそくその晩、嫁入りということになります。有頂天の吉公は、湯屋に行って一人で舞い上がっています。これを横で聞いていた同じ長屋の漉き返し屋の徳は面白くない。そこで同じく独り者の鍛冶屋の鉄、広め屋の万と組んで、不動坊火焔の幽霊が出るという趣向で、吉公をおどかすことになりました。

【聴きどころ】
聞きどころ満載の大ネタです。まずは、突然降って湧いた縁談に大喜びして、湯屋で初夜の妄想にひたる吉公のはしゃぎぶりが楽しい。嫌がらせをしようとする三人の冴えない独身男は、つまらないことで仲間割れをします。そのケンカの様子が子供っぽくて、なんとも可笑しい。幽霊役の噺家も吉公にお金をもらって寝返ってしまう軽薄さ。馬鹿馬鹿しくて落語らしい噺です。遊雀師匠は過激とも思える演出で、笑わせてくれます。

【もうひと言】
明治ごろの長屋の雰囲気も感じられて、古風な趣もあります。漉き返しとは、いわゆる再生紙のこと。広め屋とはちんどん屋の原形です。道具立てやサゲは少々異なっていますが、もとは上方噺です。

[収録：2009年5月18日　お江戸日本橋亭（東京・三越前）]　

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