長屋の花見

落語の長屋に初登場の三ちゃんに注目

【あらすじ】
貧乏長屋の大家とその住人が花見に出かけることになりました。といっても金のない連中のことですから、酒はなくてその代わりにお茶、肴も蒲鉾の代わりに大根、卵焼きの代わりに沢庵というていたらく。それでも何事にも前向きな大家を先頭に立てて長屋の衆は花見へと出かけて行くのですが、何しろ肝心の酒がない花見なのでみんなの意気も上がらず……。

【聴きどころ】
兼好師は非常に論理的に噺を組み立てていく噺家さんです。例えば花見に行く動機も他の噺家さんであれば、他人からうちのことを貧乏長屋と言われて悔しいと大家が言い出して、それにつられて長屋の住人がつきあうことになります。ところが兼好版『長屋の花見』では余りに貧乏なので貧乏神を追い払うために花見に行こうと大家が提案し、それでも嫌がる長屋の住人に対して、だったら今すぐ店賃を払えと脅します。どちらの方が理にかなっているかは明らかでしょう。

【もうひと言】
兼好師はどの演目でも兼好師ならではのくすぐり沢山の噺に仕立て上げるのが特徴です。この『長屋の花見』でも、長屋で一番頭がいいと言われる三ちゃんという独特のキャラクターを作り出し、他の噺家さんのとはまるで違う一席に仕上げています。いかにも兼好師らしい『長屋の花見』と言えるでしょう。

［収録：2009年2月8日　なかの芸能小劇場（東京・中野）］

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