「月刊 中島新聞」2013-1月号 ゲスト：小林健治（全巻セット）

橋下徹現象と部落差別

最近の大手メディアは、「わかりやすさ」と「単純化」の区別がつかなくなっています。複雑な問題を「ＹＥＳかＮＯか」「賛成か反対か」といった二分法に還元し、「スピード感」を演出することで拙速に答えを出そうとしています。

「月刊 中島新聞」では、「単純化」と「スピード感」に徹底的に抗いたいと思っています。
敵を見つけバッシングし、あっという間に忘れてしまう現代に、異なる視点を導入したいと思っています。
本当のわかりやすさとは何か？
今、じっくり考えてみなければならないテーマとは何か？
なかなか大手メディアが取り上げないテーマに切り込みながら、今最も話を聞いてみたいゲストをお呼びし、議論を深めます。

　 * * * * *


1月号では、長年「部落解放同盟糾弾闘争本部」のメンバーとして活躍し、現在「にんげん出版」代表を務める小林健治さんがゲストです。
テーマは「橋下徹現象と部落差別」。
2011年の大阪Ｗ選挙の際に『新潮45』『週刊新潮』『週刊文春』は橋下氏の父親の「出自」をセンセーショナルに報じました。
橋下氏は「バカ新潮」「バカ文春」と応戦し、両出版社は批判を浴びましたが、雑誌の売れ行きはアップ。
『新潮45』は「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞しました。

そして起きたのが、『週刊朝日』の連載中止騒動。
経緯の検証によって問題は収束したように見えますが、小林さんは重要な論点が抜け落ちていると主張します。

小林さんは「差別語」を用いたことが問題ではなく「表現の差別性」こそが問題だと論じます。
また、連載によって同和地区が特定されたことが問題ではないと論じ「社会的な必要性・必然性・合理的理由があれば、同和地区を特定することに問題はない」と言います。

差別表現問題の核心はどこにあるのでしょうか。
なぜ『週刊朝日』の連載は問題で、魚住昭さんの『野中広務－差別と権力』(講談社)は評価されるのでしょうか。

小林さんのロジックは、極めて明快です。約1時間の対談を聞いていただければ、差別表現問題の重要な論点は、ほぼクリアになると思います。
非常に濃密で充実した放送をぜひお聞きください。

時評のコーナーでは、「ちぐはぐな安倍内閣」をテーマにお話ししました。


■今月の一冊■
今月は、いとうせいこうさんの「想像ラジオ」(『文藝』春号)を取り上げました。
私が考える死者論と、いとうさんの死者をテーマとしたフィクションの接点を考えました。
「想像ラジオ」は3・11後の小説のなかで、最大の傑作です。



中島岳志



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